ごはんと環境:人口増加と水田開発

当たり前の話ですが、人口が増えると労働力が増え、食糧増産が可能となります。食糧生産が増えれば飢える人が減り、人口増加につながります。つまりニワトリが先かタマゴが先か…ではありませんが、食糧生産と人口は密接に結びつき、相関しています。
日本の人口は減少傾向の時代を迎えたとはいえ、約1億2千万を数えています。さまざまな食糧の中でも、単位面積あたりの収量が多く連作も可能で、良質のたんぱく質も多く含む米だからこそ、狭い国土にもかかわらず1億を超える人口を支えることが可能だったのです。
人口が少ない古代の水田は、すでに平らで樹木の少なく開墾に比較的労力を必要としない湿地帯にとどまり、湿田ゆえに収量は少なかったとみられます。
よって、急激な人口増加とはいきませんでしたが、それでも渡来人により稲作が伝わると、食糧の供給がそれまでと比べて安定するようになり、停滞していた人口が増加傾向に転じていきます。
人口が増えると集団で組織的な水田開発が可能となり、紀元前1世紀頃より河川から灌漑用水が供給できる範囲に稲作は拡大していくように。
2世紀末までには西日本で開発が容易な平野はほとんど開発され、技術的にも半湿田~半乾田~乾田と生産性の高い水田が生まれていきます。3世紀はじめの人口はおよそ250万人を数えるようになります。
3世紀から8世紀にかけては東日本へ稲作が本格的に広がります。東日本では大規模な開発が、西日本ではため池による開発が進むにつれ、人口も8世紀末で約600万人と大きく伸び、すさまじい勢いで日本列島は「瑞穂の国」へと変わっていきますが、やがて大規模開発の余地がなくなり、9世紀から16世紀にかけては水田面積の増加率は約1割程度と停滞します。それでも品種改良や耕作方法改善など技術が進化し、16世紀半ばに人口は1千万を突破します。
しばらく足踏みしていた水田開発も、16世紀半ばから治水土木に有能な戦国大名たちが大河川下流の沖積平野の開発を進め、17世紀末には人口が約3千万人とわずか100年あまりで3倍増と顕著な伸びをみせます。沖積平野の開発は、この時代に河川の送流土砂が農地として利用可能な高さにまで堆積してきたことも大きな要素です。
18世紀から19世紀は冷夏による凶作が多く、東北や北関東ではたびたび起こる凶作のために人口は激減したものの、西日本は干拓による農地開発で人口は増加、トータルでは約3千万人で推移します。
20世紀になると国土はほぼ開発し尽くされていましたが、明治期は国の直轄事業による疎水事業・干拓事業などで、これまで開発困難だった土地が欧米の新しい土木技術の導入により水田へと生まれ変わります。
また、大正から昭和初期は北海道の広大な大地に水田が拓かれていきます。
しかし、顕著だったのは水田開発よりもむしろ農業技術の進歩で、1890年頃から1950年頃にかけて単位面積あたりの収量は約1.5倍と急激に伸びていきます。そして人口は1億人を突破していくのです。
7万人から1億人へ。水田開発は人口増加とともにありましたが、その陰には先人たちの辛苦があったことも忘れてはなりません。
参考文献
本間俊朗『日本の国造りの仕組み : 水田開発と人口増加の関連』山海堂
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◆この記事へのコメント
- 国土開発の歴史は、米作りにあったんですね。
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Posted by モッサン
at 2008年10月26日 07:53
- 水田開発が人口増加に密接に関係していたんですね。
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Posted by もこもこ
at 2008年10月26日 07:55
- 人口増加と水田開発の関係、おもしろく読ませていただきました。
卵とにわとりの関係なんですね。なるほど!と思いました。日本の水田は、日本人にとって無くてはならない大切な食糧源なんですね。 -
Posted by koyoi-haru
at 2008年10月26日 13:40
- 飢えに対する恐怖が、水田開発への活力だったんでしょうね。その恐怖が食への不信感となっている現在、どうやって克服すべきなのでしょうか?
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Posted by はっちゃん
at 2008年10月26日 21:39
- この頃の食品偽装や、異物混入の事件を耳にして、私は自分の目や感覚でしっかり買い物しないといけないなと思います。表示で材料を確かめたりはもちろんです。事件になっている大半は加工度が高い食品です。便利だけれど、どこまで許せるのかを考えて日々の食生活にうまく取り入れるべきでしょう。便利な食品に米や生鮮食品が押されませんように。
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Posted by 金魚
at 2008年10月29日 16:59
- 水田開発と人口増加は密接な関係があったのですね。
人口増加に対して食糧増産。拡大時期には大切ですが、現代の様に減少時代に入った時には内容を見直さないと、偽装や汚染に目を向けてしっかりとチェックしたいものですね。 -
Posted by いけやん
at 2008年11月07日 07:15
- 米作りが手作業から機械化されてから一段と生産量が増したのでしょうね。米不足にならない為には機械化は仕方ないとしても、手作業で八十八の手間暇かけてつくるお米も食べてみたいです。
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Posted by もこもこ
at 2008年11月07日 08:41
- どうして稲作が増えると人口が増加するのでしょうか?食糧が安定すると、赤ちゃんをもっと産もうという考えに結びつくのでしょうか。
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Posted by ゆきまるねね
at 2008年11月07日 14:12
- なぜ湿田は収量が少ないんでしょうね。
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Posted by モッサン
at 2008年11月07日 19:49
- 「どうして稲作が増えると人口が増加するのでしょうか?」
私なりの答えです。『貧乏人の子沢山』という言葉を聞いたことがありませんか?そうですご飯がまさに主食だった貧しい家庭では子供が生まれやすいのです。日本の秋の味覚は栄養満点の食べ物ができます。柿・葡萄・梨・りんご・みかん、その中でもお米は一年をかけて、夏の太陽の力・森の国の大地の力・水田の泥の力の結集したお米は宝石で例えるなら『金』です。
なぜなら、一番ミネラルも豊富な食べ物です。だからお米を食べると子供が生まれやすいのです。お米を食べなくなりはじめたのと子供の生まれる数が減り出した時が一致します(1975年ごろ)、その後の推移・軌跡も見事に一致しますよ。
お米は田から物=宝物 だから子供のことを“子宝”というのです。
食品偽装についての私の意見です。
命にかかわる大事な食べ物を誰も説明する人がいない所で買うこと自体が間違いではありませんか?米屋だとか自然食品店だとか専門店で説明を聞いて買えばよいと思います。なによりも物知りに賢くなります。
大型店で消費者が表示を見て買うだけなら「嘘が入る」ってもおかしくはない、今はそんな時代です。消費者が賢くなっていかないと『嘘』は永遠になくならないでしょうね。 -
Posted by 田から物
at 2008年11月14日 13:57
- 同じ面積でも農業開発により1.5倍のお米の収穫量になるなんてすごいですね。
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Posted by もこもこ
at 2008年11月22日 00:06
- これからの日本は人口が減少傾向になってきます。おコメの自給率は現在のままなら100%になるかも知れませんが、他の食品はもっと輸入増になるでしょうね。
田んぼがこのまま減らないで、緑が保たれるなら環境も守られて、荒廃しかけた人の考え方も以前のように戻るかも知れませんね。 -
Posted by いけやん
at 2008年11月22日 07:30
- こうやって苦労して開墾された水田が今は放置される所が増えてきているのですから嘆かわしいことです。
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Posted by モッサン
at 2008年11月22日 16:26
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日本がここまで来れたのもおコメの力ですね。
これからもおコメの力で日本を守らないといけません。